「国が決めたルール」より「企業の利益」が上? スマホのOSアップデートよりエグい、国家主権の上書き。
## TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の表向きの理由と、教科書が教えない違和感
「これからは、太平洋を取り囲む国々で仲良く自由に貿易をしようぜ!」
2016年、テレビのニュースはまるでお祭りのような騒ぎでした。それがTPP(環太平洋パートナーシップ協定)です。
表向きの理由は、とってもキラキラしています。「関税(輸入品にかかる税金)をゼロにして、もっと安く海外の製品を買えるようにしよう。日本の美味しいお米や車を世界中に売って、みんなでリッチになろう!」という、まさに「全人類ハッピー計画」。
でも、ちょっと待ってください。もしこれがただの「お買い物がお得になるチケット」だとしたら、なぜ各国の農家さんはトラクターを走らせて必死にデモをしたのでしょうか? なぜ、頭脳明晰な弁護士や医者たちが「これは国家の崩壊だ」と青ざめたのでしょうか?
実は、TPPの本質は「関税」なんていう小さな話ではありません。帳簿の裏側を覗くと、そこには「国の法律を、巨大企業の規約に書き換える」という、とんでもない裏側のシステムが見えてくるのです。
## 多国籍企業はいかにしてTPPで莫大な富を得たのか?:最強の「ショバ代」ビジネス
TPPにおける「最大の受益者」は、国でも国民でもなく、国境を持たない「多国籍企業」たちです。
彼らが手に入れたのは、単に「商品を安く売る権利」ではありません。「もし国が企業の邪魔をしたら、その国を訴えて、多額の賠償金をぶんどる権利」です。これをISDS条項と呼びます。
【最強の例え話:部活のルールと「スポンサー様」】
想像してみてください。あなたはサッカー部のキャプテンです。チームには「怪我をしないように、練習は1日2時間まで。安全なスパイクを履くこと」という部則(法律)があります。
そこに、巨大なスポーツメーカーが「スポンサー(多国籍企業)」としてやってきました。スポンサーは言います。「TPPっていう契約を結んだから、これからはうちのスパイクを全員買いなさい。え?『高すぎるし、足が痛くなる』って? 知るかよ。そんな文句を言ってうちの売り上げが落ちたら、お前の部活を『営業妨害』で訴えて、部費を全部没収してやるからな」
……これが、TPPの裏側で起きていることの正体です。
多国籍企業のCEOたちの本音:「おいおい、どこの誰が『国民の健康のため』なんて理由で添加物の規制をしてるんだ? 俺たちの商品の売れ行きが悪くなっただろ。その『損失分』、キッチリこの国の税金から払ってもらおうか。文句があるなら『国際法廷』で会おうぜ。あ、ちなみに裁判官は俺たちの仲間だけどな(笑)」
こうして、巨大企業は「各国の法律」という壁をブチ破り、自分たちの利益を最大化する「無敵モード」を手に入れたのです。
## TPPによるシステム変更:【国家主権】から【企業主権】への激変
この事件は、世界というゲームの「OSのアップデート」です。それも、ユーザー(国民)の許可なく行われた強制アップデートです。
これまでの世界(Before)は、「国家主権」がベースでした。「日本で商売をするなら、日本のルール(法律)に従えよ」という仕組みです。
しかし、TPP以降の世界(After)は、「企業主権」へと書き換えられました。「企業が儲ける邪魔になるなら、国のルールの方を変えろ」という、主従逆転のシステムです。
具体的に何がアップデート(改悪)されたのか?
医療制度のサブスク化(予定):今は3割負担で受けられる日本の医療。でも、多国籍製薬会社からすれば「もっと薬を高く売りたい」わけです。「日本の公的保険制度のせいで、俺たちの新薬が高く売れない! 営業妨害だ!」と訴えられたら、将来的に窓口負担が跳ね上がるかもしれません。
食の安全の「非関税障壁」認定:「遺伝子組み換え」や「成長ホルモン漬けの肉」を規制しようとすると、「それは自由貿易を邪魔する不当なバリアだ!」と認定されます。結果、私たちは「何が入っているかわからない格安食品」を食べ続ける選択肢しか残されなくなります。
ISDSという「リアル課金アイテム」:これが最凶のシステムです。企業が国を訴える場所は、その国の裁判所ではありません。ワシントンにある、企業寄りの弁護士が仕切る「国際仲裁センター」です。ここでは、国の法律よりも「企業の期待利益」が優先されます。
つまり、日本の法律(プログラム)の上に、TPPという上位のプログラムがインストールされ、日本の法律がバグとして処理されるようになったのです。
## TPPから学ぶ現代の教訓:最大の「被害者」にならないために
このTPPというシステム変更で、最大の被害を受けるのは誰でしょうか?それは、「この仕組みの変化を知らずに、ただ消費し続けるあなた」です。
政府は「経済成長のために必要だ」と言います。しかし、その成長で得られた富は、あなたの給料に還元されるのではなく、グローバル企業の内部留保や、海外の株主への配当へと吸い上げられていきます。
私たちが奪われたもの
- 将来の選択肢: 自分の国のルールを、自分たちの投票で決められなくなる。
- 安全の権利: 「安いけれどリスクがあるもの」を拒否する基準が壊される。
- 財布の防衛力: 税金が、企業の賠償金支払いに消えていく。
現代を生きるための「眼鏡」
「自由貿易」という言葉は、耳に心地よく響きます。でも、これからはこう疑ってみてください。「その『自由』は、誰のための『自由』なのか?」と。
消費者が安く買える自由なのか? それとも、巨大企業が国の法律を無視して暴利を貪る自由なのか?
TPPは、単なる貿易の約束ではありません。それは、「資本主義というゲームのルールが、プレイヤー(企業)によって書き換えられた瞬間」だったのです。
明日からニュースを見るときは、この眼鏡をかけてみてください。「国がこう決めた」というニュースの裏に、「それによって一番ニヤけている企業はどこか?」を探す癖をつけるだけで、あなたはもう「搾取されるだけの被害者」から脱出する第一歩を踏み出しているのです。
「世の中、タダより高いものはない。そして、『自由』という言葉ほどリスクのある言葉はない。」
今日の講義はここまで! しっかり復習して、騙されない大人になってくださいね。
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