「全米が泣いた、そして戦争を始めた。」教科書も黙る、広告代理店が仕掛けた史上最悪のフェイクニュース。
## イラクの「ナイラ証言」の表向きの理由と、教科書が教えない違和感
1990年10月。アメリカの議会に、一人の少女が現れました。彼女の名前はナイラ。まだ15歳の、どこにでもいそうな少女です。
彼女は震える声で、マイクに向かって語り始めました。目に涙を浮かべながら。
「……イラクの兵士たちが病院に押し寄せてきました。彼らは未熟児たちのための『保育器(孵化器)』から、赤ちゃんを取り出し、冷たい床に放置して……死なせたんです。私は、自分の目でそれを見ました。」
「全米がフリーズした瞬間」でした。
当時、サダム・フセイン率いるイラク軍が隣国のクウェートに侵攻していました。でも、当時のアメリカ国民は「なんでわざわざ遠い中東の砂漠まで行って、俺たちの税金を使って戦争しなきゃいけないの?」と、戦争には消極的だったんです。
でも、この「ナイラ証言」がテレビで一斉に流れた瞬間、空気は一変しました。「あんな極悪非道なイラク軍、許せない!」「赤ちゃんを殺すなんて悪魔だ!」
ブッシュ大統領(父)もこの動画を何度も引き合いに出し、国民の怒りは爆発。こうして、アメリカは空爆を開始——「湾岸戦争」が始まりました。
……でも、ちょっと待ってください。この感動的(?)で悲痛なストーリーには、最初から最後まで「あるはずのない矛盾」が詰まっていたんです。まるで、脚本が用意されたハリウッド映画のように。
## 広告代理店ヒル&ノウルトンはいかにして「ナイラ証言」で莫大な富を得たのか?
この事件の「真の黒幕」は、銃を持った兵士でも、ましてや独裁者でもありません。世界最大級のPR会社(広告代理店)、「ヒル&ノウルトン」です。
実は、ナイラ少女が議会で涙を流す数ヶ月前、クウェートの亡命政府(自国を追われた王族たち)は、ある巨大な契約を結んでいました。
- クライアント: クウェート政府(「自由クウェートのための市民」というダミー団体)
- 受注先: 広告代理店「ヒル&ノウルトン」
- 契約金: 当時の金額で約1200万ドル(現在の価値で約30億円以上!)
彼らのミッションはただ一つ。「アメリカ人にイラクを嫌わせ、戦争を賛成させること」。
これ、現代風に例えるとこうなります。あなたがソシャゲのプロデューサーだとしましょう。最新のガチャを爆死した直後で、ユーザーの不満が爆発しています。「この運営、最悪だ!」という声がSNSで溢れている。
そこであなたは、有名なインフルエンサー事務所(広告代理店)に30億円を払います。事務所は「可哀想な被害者」の役者を雇い、「私、このゲームで詐欺に遭って人生壊れました、でも運営さんは悪くないんです、悪いのはアンチなんです!」とSNSで涙ながらのライブ配信をさせる。それを見た一般ユーザーは「えっ、そうだったの?アンチの方が悪役じゃん!」とコロッと騙される……。
現実のナイラ証言は、これの「国家規模バージョン」でした。
実はナイラ、病院のボランティアなんかじゃありませんでした。彼女の正体は、「在米クウェート大使の娘」。彼女は、戦時中のクウェートの病院になど一度も行っていなかった。ワシントンの豪華な自宅で、PR会社の指導のもと、「演技の練習」をしていただけだったんです。
「ヒル&ノウルトン」は、彼女に『演技指導』をし、カメラ映りの良い照明を当て、最もアメリカ人の感情を揺さぶる「赤ちゃんの虐殺」というエピソードを盛り込んだ。
彼らが獲得した受益内容:それは、単なる「30億円の報酬」だけではありません。「PR(パブリック・リレーションズ)の力を使えば、大衆を意のままに操り、国家予算を動かし、戦争すら始められる」という恐ろしい実証を成し遂げてしまったのです。
## 湾岸戦争によるシステム変更:[Before] 証拠重視から [After] 感情操作への激変
このナイラ証言という「事件」は、世界のOS(仕組み)を根本から書き換えてしまいました。
【Before】戦前:証拠と論理の時代
昔の戦争は、「国境を越えたから」「条約を破ったから」といった、ある程度「客観的な事実」に基づいて議論されていました。国民を納得させるには、それなりの証拠が必要だったんです。
【After】戦後:プロパガンダ2.0(感情ハックの時代)
ナイラ証言以降、権力者は気づいてしまいました。「人は『正しいデータ』では動かない。でも、『かわいそうな女の子の涙』を見せれば、秒で動く」ということに。
この事件は、戦争が「政治」から「マーケティング」へと進化した瞬間でした。
アップデートされたルールの特徴:
- スマホ(当時はテレビ)を通じた「感情へのダイレクトアタック」
- SNS(当時は大手メディア)の拡散力を使った、事実確認(ファクトチェック)前の開戦
- 「正義の味方」というブランディングの構築
現代の私たちが、スマホで流れてきた衝撃的な動画を見て「これ、ひどい!」とリポスト(拡散)する。その1回のタップが、実はどこかのPR会社が仕組んだ「誰かの利益のための扇動」かもしれない……。そのテンプレートは、まさにこの1990年のナイラ証言で作られたのです。
いわば、「悲劇の演出」という名のウイルスが、私たちの民主主義というシステムに感染したようなものです。
## 「ナイラ証言」の裏側から学ぶ現代の教訓:最大の被害者にならないために
この「嘘」がバレたのは、戦争が終わった後のことでした。調査チームがクウェートの病院を調べた結果、赤ちゃんの遺体も、無くなった保育器も、どこにも存在しなかったんです。
でも、その時にはもう遅すぎました。イラクの街は爆撃され、数万人レベルの犠牲者が出て、中東の秩序は完全に破壊されていました。
最大の被害者は誰だったのか?
一番の被害者は、もちろん命を落としたイラクの市井の人々です。でも同時に、私たち「世界の視聴者」もまた、深刻な被害者なのです。
私たちは「善意」を盗まれました。「困っている人を助けたい」という純粋な気持ちを、特定の企業(広告代理店)や権力者の金儲けのために利用されたのです。
私たちが明日から「眼鏡」を変えるための3ステップ
「全米(全SNS)が泣いた」ときこそ、逆を疑えあまりに出来すぎた「感動的な悲劇」や「わかりやすい悪役」が出てきた時は、まず一呼吸置くこと。それは「誰かがあなたに怒りを感じてほしい」という意図で作られた広告かもしれません。
受益者は誰か?(Follow the Money)を考える「この事件が起きて、一番得をする企業や国はどこだろう?」という視点を持つだけで、情報の解像度は100倍上がります。
「涙」の裏の「契約書」を探す感情を揺さぶる情報の裏には、往々にしてPR会社やロビー活動団体が絡んでいます。証言をしている人の「肩書き」ではなく、「背景にある組織」をググる癖をつけましょう。
現代社会は、毎日が「ナイラ証言」の連続です。インフルエンサーの涙、企業の謝罪、政治家の怒り……。その多くは、どこかの天才的なPRマンが書いた「台本」通りかもしれません。
「真実は、常に演出の裏側に隠されている。」
次にスマホの画面で「信じられないほどひどいニュース」を見たとき、このナイラという少女の涙と、その背後にいた30億円を動かす広告代理店の存在を、ちょっと思い出してみてください。
それが、あなたが情報という戦場で「被害者」にならないための、最強の防弾チョッキになるはずだ。
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