PowerShellでPCのシリアル番号を一瞬で取得する「黒魔術」ワンライナー

「ええと、PCの裏側にあるシールの番号を教えてください」

ヘルプデスクやメーカー保守と電話をしている際、そう言われて溜め息をついたことはないだろうか。デスクの下に潜り込み、埃を被った重い筐体を必死にひっくり返す。ようやく見つけたシールは長年の摩擦で文字がかすれ、老眼を疑うほど判読不能……。そんな徒労に心当たりがあるはずだ。

PCを物理的に動かすという「アナログな苦行」は、今日この瞬間に卒業しよう。

Windowsには、ハードウェアの深淵に直接アクセスし、端末固有の「真実の名(シリアル番号)」を呼び出す魔法が備わっている。それがPowerShellだ。指先三秒のタイピングで、裏面のシールが読めなくても、BIOS(バイオス)という基板上のチップは決して嘘をつかない。

この記事では、ITエンジニアが現場で密かに使いこなす「PCシリアル番号取得の黒魔術」を伝授する。この記事を読み終える頃、あなたはPCをひっくり返す滑稽な姿とは無縁になり、キーボード一つで情報を支配する全能感を手に入れているだろう。


なぜPowerShellなのか?PC裏側のシールを見なくていい理由

あなたは、目の前のPCが「自分は何者であるか」を完璧に記憶していることを知っているだろうか。多くのユーザーは、端末の情報は外装のシールにしか書いていないと思い込んでいる。しかし、それは暗闇の中で手探りに鍵穴を探すようなものだ。PowerShellを使えば、壁を透過して鍵の構造そのものを見るように、内部から正確な情報を引き出せる。

シールが削れて読めない!という絶望からの解放

「長年愛用したノートPCの修理を依頼しようとしたが、型番シールが完全に磨耗して真っ白だった」という経験は少なくない。特にモバイルPCの場合、膝の上やカバンとの摩擦で、もっとも重要な「S/N(シリアルナンバー)」の印字が消えてしまうのは世の常だ。

SNSでは「シールの文字が読めなくて、スマホのカメラで拡大しても判別できず、結局サポートを受けられなかった」という悲嘆の声も散見される。こうした物理的な劣化というアナログな限界を、デジタルな命令が一撃で凌京する。PowerShellのコマンドは、外装の状態に依存しない。たとえ筐体がボロボロであっても、マザーボードが無事である限り、中身の「骨格(BIOS)」から直接データを抽出できるからだ。

リモート操作やサーバー管理でも威力を発揮

また、この技術は「目の前にPCがない状況」でこそ真価を発揮する。例えば、社内ネットワーク越しに離れた部屋にあるサーバーの保守期限を確認したい時、わざわざ現地へ赴き、極寒のサーバーラックに潜り込む必要はない。

「わざわざコマンドを打つより、スマホで写真を撮る方が直感的だ」という意見もあるだろう。しかし、それが100台、1,000台となったらどうだろうか。一台ずつひっくり返して撮影する作業は、もはやエンジニアの仕事ではなく、単なる肉体労働だ。業界では「優れたエンジニアほど、椅子から動かずに仕事を終える」という見方が広がっている。PowerShellを使いこなすことは、単なる時短ではなく、知的なプロフェッショナルとしてのスタンスそのものなのだ。


【レシピ】シリアル番号を召喚する魔法のワンライナー

それでは、実際にシリアル番号を召喚する「呪文」を紹介しよう。Windowsのスタートボタンを右クリックし、「Terminal」または「PowerShell」を起動してほしい。

Get-CimInstance Win32_Bios の解説

入力すべき魔法の言葉は、以下の1行だ。

Get-CimInstance Win32_Bios

このコマンドを実行した瞬間、画面には「SerialNumber」という項目とともに、あなたのPCの固有番号が表示されるはずだ。

ここで「Get-WmiObjectを使わないのか?」と疑問に思うベテラン魔術師(エンジニア)もいるかもしれない。確かに古い技術書にはそう記されている。しかし、現代の黒魔術師は、より洗練された Get-CimInstance を選ぶ。WMI(Windows Management Instrumentation)は旧世代の遺物となりつつあり、Microsoftもより高速でモダンなCIM(Common Information Model)への移行を推奨しているからだ。これは、風化した碑文を解読する(旧命令)のではなく、最初から整理された電子図書を閲覧する(新命令)ような進化である。

実行結果の読み方と注意点

コマンドを打つと、シリアル番号以外にも「SMBIOSBIOSVersion(BIOSのバージョン)」や「Manufacturer(製造元)」などが同時に表示される。

「専門家の間では、トラブルシューティングの際にシリアル番号とBIOSバージョンのセット確認は鉄則とされている」という話は有名だ。シリアル番号が分かれば、メーカーの公式サイトでその個体専用の最新ドライバーを確認できる。

ただし、注意点がある。このコマンドは「相手のポケットを探らなくても、向こうから名刺を差し出させる命令」を含んでいるが、ごく稀に情報の提示を拒むケースがある。それは、PCの心臓部であるBIOSに情報が正しく書き込まれていない場合だ。これについては、後のセクションで詳しく解説しよう。


応用編:クリップボード保存と複数台一括取得

シリアル番号を表示させるだけでは、黒魔術としてはまだ「初級」だ。本物の魔術師は、取得した情報を次の工程へと流れるように繋げる。

そのまま貼り付け! | Select -ExpandProperty の技

表示された番号をマウスでドラッグしてコピーするのは、いかにもスマートではない。取得した瞬間にクリップボードへ送り込み、そのまま管理台帳やチャットツールに「貼り付け(Ctrl+V)」ができる状態にするのが中級者の作法だ。

以下のコードを試してみてほしい。

(Get-CimInstance Win32_Bios).SerialNumber | Set-Clipboard

これを実行しても、画面には何も出ない。しかし、あなたのPCのメモリ内には既にシリアル番号が格納されている。あとは貼り付けたい場所でCtrl+Vを押すだけだ。「PC情報を取得して、1秒後には報告書に反映させる」というスピード感は、一度味わうと病みつきになる全能感がある。

「社内の資産管理を一人で任されているが、この一行を知ってから作業時間が半分になった」という声は少なくない。年間で合計すれば、PCをひっくり返して型番をメモしていた数時間は、丸一日分の休暇に匹敵するほどの価値を生み出すだろう。


もし「0123456789」や空欄が出たら?魔法が効かない時の対処法

万能に見えるこの黒魔術にも、唯一の弱点がある。それは「召喚対象が名前を持っていない場合」だ。

自作PCや仮想環境での挙動について

もし、実行結果に「To be filled by O.E.M.」や「0123456789」、「System Serial Number」といった無機質な文字列が表示されたなら、それは魔法の失敗ではない。そのPCのBIOSに、メーカーがシリアル番号を書き込んでいないことを意味する。

これは主に、以下のケースで発生する。

  • 自作PC: パーツを組み合わせて作ったPCは、特定の「完成品としてのシリアル」を持たないため、空欄になることが多い。
  • 仮想環境(VMwareやHyper-Vなど): 物理的な実体がないため、仮想的な番号が割り振られるか、未設定になる。
  • マザーボード交換修理後: 修理業者が情報の書き戻しを忘れた場合、ここが空欄になる。

「SNSでは『せっかくコマンドを覚えたのに表示されなかった、ガッカリだ』という投稿も見かける」が、落胆する必要はない。この結果自体が「このPCは標準的なメーカー既製品の管理プロセスから外れている」という重要な証拠(エビデンス)になるからだ。

とはいえ、大手の法人向けPC(Dell, HP, Lenovo, 富士通, パナソニックなど)であれば、ほぼ100%の確率で正確な番号が召喚される。それこそが、大規模な資産管理を自動化したいという大企業の切実な要望から生まれたDMI(Desktop Management Interface)という規格の恩恵なのだ。


まとめ:スマートなシステム管理への第一歩

PCのシリアル番号を知るために、重い筐体を持ち上げる時代は終わった。今回紹介したPowerShellのワンライナーは、単なる便利ツールではない。表面的な事象(外装のシール)に惑わされず、その根源(BIOSシステム)に直接アクセスするという「本質主義」への入り口だ。

本記事の要点を振り返ろう。

  1. 物理的制約の打破: シールが削れていても、PCを動かせなくても、内部から情報は抜ける。
  2. モダンな手法の選択: Get-WmiObject ではなく Get-CimInstance を使うのが現代の正解。
  3. ワークフローの自動化: Set-Clipboard を組み合わせれば、転記ミスすらゼロになる。

もしあなたが今日、自分のPCや職場のPCでこのコマンドを叩いたなら、それが「プロのエンジニア」への第一歩だ。まずは自分のPCの番号をクリップボードにコピーすることから始めてみてほしい。

それはまるで、風化した遺跡で地中のタイムカプセルを掘り当てるような、静かな、しかし確かな興奮をあなたに与えてくれるはずだ。

エンジニアの正義は、キーボードの上にある。 次に誰かから「シリアル番号を教えて」と言われたとき、あなたは不敵な笑みを浮かべながら、音もなくその「魔法」を唱えることになるだろう。

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