「やばい、昨日のうちに提出したことにしないと……」
そんな焦燥感に駆られ、画面の前で固まったことはありませんか? 締め切りが過ぎてしまったレポート、数日前に修正済みであるべきだった仕様書。Windowsの標準機能では、プロパティ画面から「ファイルの更新日時」を書き換えることは不可能です。
しかし、諦めるのはまだ早い。Windowsに標準搭載されている「PowerShell」という杖を振れば、事実は変えられずとも、記録はたった一行のコードでひっくり返すことができます。「時計の針は、マウスではなくコードで進めるもの」なのです。
この記事では、ファイルのタイムスタンプを意のままに操るための「黒魔術」のようなレシピを伝授します。単純な更新から、あえて過去の日時に戻す偽装術、そしてそれらが内包するリスクまでを徹底解説。この記事を読み終える頃、あなたはWindowsという世界の因果律に干渉する、エンジニアの視点(ひび)を手に入れているはずです。
なぜ更新日時の操作が必要なのか?Windows版「touch」の正体
「ファイルの日時をいじるなんて、不正ではないか」と感じる方もいるでしょう。しかし、この操作はシステム管理や開発の現場では、極めて真っ当な「技術的ニーズ」として存在します。
例えば、ファイルの更新日時をトリガーにして動作するバックアップソフトや自動化プログラムがある場合、中身を書き換えずに「最新のファイル」として認識させる必要があります。あるいは、ファイル整理の過程でメタデータが壊れてしまい、体裁を整えるために再設定が必要になるケースも少なくありません。
業界では「タイムスタンプは情報の鮮度を証明する唯一の看板である」という見方が広がっています。看板が古びていれば、中身がどれだけ高品質でも、システムや人間はそれを「死んだデータ」と見なしてしまうのです。
LinuxのtouchコマンドをWindows PowerShellで再現する
UNIX系OS(LinuxやmacOS)には、古くからtouchという、ファイルのアクセス日時や更新日時を現在時刻に更新するための標準コマンドが存在します。エンジニアにとって、これは空気のように当たり前の道具です。
しかし、Windowsには長らく同様の機能が標準搭載されてきませんでした。右クリックのプロパティを何度眺めても、日付の数字は無慈悲に過去を指し示したまま。そこで登場するのがPowerShellです。PowerShellは単なるコマンドプロンプトの進化版ではなく、Windowsの深層(.NETオブジェクト)を直接操作できる強力な環境です。
PowerShellを使えば、Windowsが頑なに守ろうとする「ファイル整合性」という殻を突き破り、Linuxのtouch以上の精度でオブジェクトのプロパティを上書きできます。これは、賞味期限のラベルを貼り替える「ラベルの張り替え」のようなもの。中身(コンテンツ)は変えず、見た目の新鮮度だけを操作する、デジタル版の修正液なのです。
【実践】ファイルを「今」に更新する最強のワンライナー
では、具体的にどうすれば「今」という瞬間にタイムスタンプを刻めるのでしょうか。最もシンプルかつ強力な、呪文のようなワンライナー(一行のコード)を解説します。
問いかけてみましょう。あなたは今、目の前にあるファイルの「昨日」という記録を「たった今」に変えたいだけではありませんか? それには、複雑なツールもインストールも不要です。
指定した1ファイルの日時を更新する基本コード
まずは、特定のファイルを「今この瞬間」の時刻に更新する方法です。以下の呪文をPowerShellにコピー&ペーストしてください。
(Get-Item "C:\temp\sample.docx").LastWriteTime = Get-Date
この一行の仕組みは非常に単純です。
Get-Itemで、対象となるファイル(この場合はsample.docx)を掴みます。- そのファイルのプロパティである
.LastWriteTime(最終更新日時)を指定します。 - そこに
Get-Date(現在のシステム時刻)という値を代入(上書き)します。
実行した瞬間、エクスプローラー上の表示が現在の時刻にパッと切り替わるはずです。それは、栄養の切れた田んぼで耕作を続けるような絶望から解放され、一瞬で「瑞々しい最新の状態」へと生まれ変わるようなもの。どれだけ放置されていたファイルであっても、システム上は「今生まれたばかりの成果物」として扱われるようになります。
フォルダ内のファイルを一括で「今」にする応用術
「1つずつではなく、フォルダ内の100個のファイルをすべて今にしたい」という場合も、PowerShellなら一瞬です。SNSや技術フォーラムでは「大量のファイル更新こそ自動化の真骨頂だ」と、こうしたバルク処理の重要性が度々語られています。
Get-ChildItem "C:\temp\" | ForEach-Object { $_.LastWriteTime = Get-Date }
このコードは、指定したフォルダの中身をすべて取得し、一つひとつのファイルに対して「今」の時刻を刻んでいきます。まるで、止まっていた時計の針を一斉に指で弾いて動かすような、圧倒的な支配力を感じられるはずです。
単なる更新だけじゃない!特定の日時に「偽装」するテクニック
「今」に更新するだけでなく、時を遡ることも可能です。これが、この技術が「黒魔術」と呼ばれる所以(ゆえん)です。昨夜の22時に寝ていたと言い張るために、PCのログを22時で止める魔法のように、指定した任意の日付を「事実」としてファイルに刻み込みます。
昨日の定時に戻したい?任意の日時を指定する方法
「本当は昨日の17時に終わっていたはずなんです」という体裁を整えたい場合、以下のコードを使用します。
(Get-Item "C:\temp\report.pdf").LastWriteTime = "2023/10/25 17:00:00"
日時の部分は自由に書き換え可能です。これを実行すれば、Windowsという現実が書き換わり、ファイルは「2023年10月25日の17時」に修正されたという過去を背負うことになります。
実際にこの手法を使っているユーザーからは、「どうしても整合性を合わせなければならない古いデータの移行で重宝している」という声は少なくありません。履歴書に貼る写真にフィルターをかけるようなもので、本質は変わらなくても、第一印象としての「説得力」は劇的に変わります。
黒魔術の使用上の注意:バレるリスクと倫理の境界線
とはいえ、どんな魔法にも代償が伴います。この世界に完全犯罪は存在しません。記録を書き換える行為は、一歩間違えれば重大な倫理違反、あるいは法的な証拠隠滅罪に問われる可能性があるからです。
作成日時と更新日時の整合性に注意せよ
初心者が陥りがちなミスは、「更新日時」だけを変えて、「作成日時」をそのままにしてしまうことです。「2023年10月25日に作成されたファイルが、2023年10月20日に最終更新されている」このような因果律の逆転(逆行)は、一目で違和感を与えます。整合性を保つには、CreationTime(作成日時)やLastAccessTime(最終アクセス日時)も合わせて操作する必要があります。
$target = Get-Item "C:\temp\sample.docx"
$newDate = Get-Date "2023/10/24 10:00:00"
$target.CreationTime = $newDate
$target.LastWriteTime = $newDate
$target.LastAccessTime = $newDate
ここまで徹底して初めて、表面上の偽装は完成します。
システムログ(MFT)に残る「改ざんの痕跡」とは
しかし、専門家の間では「タイムスタンプ操作はフォレンジック(解析)ツールを使えば容易に見抜ける」というのが常識です。WindowsにはMFT(マスターファイルテーブル)という管理領域があり、そこにはOSが密かに記録している複数の時間軸が存在します。PowerShellで操作できるのはあくまで「ユーザーが目にする表面上の記録」に過ぎず、深層のジャーナルログには「いつプロパティが変更されたか」が残っている場合が多いのです。
これは、旅先からの消印を偽造するために隣町のポストまで走るようなアリバイ工作を行っても、スマホのGPSには移動履歴が残っているようなもの。技術的なトリックで窮地を脱したとしても、それは「薄氷の上の勝利」であることを忘れてはいけません。
まとめ:PowerShellを使いこなしてWindowsを支配する
この記事では、PowerShellを使ってファイルの更新日時を自由自在に操る「黒魔術」のレシピを紹介しました。
Get-Dateを使って、一瞬で「今」の時刻に更新できる。- 特定の日時を指定することで、過去の記録へと書き換えることが可能。
- ただし、作成日時との整合性や、システム深層のログには偽装の痕跡が残るリスクがある。
まず今日からできる最小のアクションとして、デスクトップに適当なテキストファイルを作成し、紹介したワンライナーを一行だけ打ち込んでみてください。数字が変わる瞬間を目撃するだけで、あなたは「コンピュータに命令を下す」という感覚を体感できるはずです。
デジタル環境において、事実は容易に変えられませんが、記録は技術次第でいくらでも書き換わります。それは、人類が古くから「修正液」や「上書き」を繰り返しながら、情報の体裁を整えてきた歴史の延長線上にあります。
PowerShellという杖を正しく使い、システムの前提を覆す力を手に入れましょう。ただし、その魔法を何のために使うか。その最後の判断だけは、コードではなく、あなた自身の倫理観に委ねられています。
「事実は変えられないが、記録は一行のコードでひっくり返る。」
このスリルと便利さを、あなたの明日の仕事の強力な武器にしてください。
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