「健康にいい」と笑って食べているその裏で、銃声が響き、森が消えている。これは食卓に届くまでの、最も残酷な『ビジネスモデル』の物語だ。
1. メキシコ・アボカド戦争の表向きの理由と、教科書が教えない違和感
想像してみてください。あなたは今、オシャレなカフェで1500円のアボカドトーストを食べています。「ビタミン豊富!」「森のバター最高!」とSNSにアップする。平和な日曜日の風景ですよね。
しかし、そのアボカドが育ったメキシコの農園では、今この瞬間も自動小銃を持った男たちが農家を脅しているとしたら?
「スーパーフード」という名の免罪符
表向きのストーリーはこうです。「健康意識の高い欧米や日本の若者の間で、アボカドが大ブームになった。需要が増え、メキシコの貧しい農村に富がもたらされた。これはグローバル経済の成功例である」と。
確かに、メキシコ中西部ミチョアカン州は、世界最大のアボカド生産地。アメリカへの輸出だけで年間数千億円が動く巨大マーケットです。
帳簿(バランスシート)が示す「消えた利益」
でも、ちょっと待ってください。農家の人たちの暮らしはどうでしょうか?アボカドの価格は上がっているのに、農家の人たちは防弾チョッキを着て、自ら銃を持って見張りに立っています。なぜか?
それは、「麻薬よりもアボカドの方がリスクが低くて儲かる」と気づいてしまった、最悪のプロたちが参入してきたからです。
2. 麻薬カルテルはいかにしてメキシコ・アボカド戦争で莫大な富を得たのか?
この事件(現在進行系の構造)における最大の受益者は、農家でも政府でもなく、「麻薬カルテル(犯罪組織)」です。
彼らはどうやって「緑の金」からカネを吸い上げているのか?その仕組みを、若者におなじみの「スマホゲームの運営と課金」に例えて解説しましょう。
最強の例え話:アボカド農園は「超重課金ゲー」になった
あなたが個人開発者として、めちゃくちゃ面白い神ゲー(アボカド農園)をリリースしたとします。全世界で大ヒットして、売上爆増!…と思った瞬間、画面にこんな通知が届きます。
「運営権は俺たちがもらった。これから売上の30%を『保護料』として振り込め。拒否するならアカウント(お前の命)を消す」
これが、今メキシコで起きていることです。
- ショバ代(みかじめ料)の強制: カルテルは農家に対し、「箱1つにつき◯円、土地1ヘクタールにつき◯万円払え」と要求します。
- データの支配: 彼らは政府の農業統計データをハッキング(または役人を買収)して入手します。「どの農家が、今年どれくらい稼いだか」を完全に把握した上で、ピンポイントで取立てに行くのです。
- サプライチェーンの乗っ取り: 輸送トラックの運転手、梱包工場、果ては輸出業者の利権まで、カルテルが実質的に支配します。
悪役(カルテル幹部)の独り言
「おい、コカインを運ぶのはリスクが高い。犬に嗅がれるし、警察もうるさいだろ?でもアボカドはどうだ?中身はただの果物だ。アメリカ人は勝手に『ヘルシーだ』とか言って高い金を払ってくれる。農家を脅すだけで、何もしなくても金が転がり込んでくる。これこそ最高のマネーロンダリングだろ?」
3. メキシコ・アボカド戦争によるシステム変更:経済から暴力への激変
このアボカド需要の爆発は、メキシコの社会構造を「OSの書き換え」レベルで変えてしまいました。これを「経済の軍事化」と呼びます。
Before:平和な農業経済
元々、アボカド栽培は代々受け継がれる地味な農業でした。近所付き合いがあり、季節になれば収穫して出荷する。それだけの世界です。
After:略奪と破壊の「暴力経済」へのアップデート
トリガーとなったのは、米国でのアボカド需要の異常な高まりでした。これにより、法律が追いつかないスピードで以下の「アップデート」が強制実行されました。
- 「自警団(Autodefensas)」の結成: 警察がカルテルとグルで守ってくれないので、農家が自らライフルを持って軍隊化しました。パパが昼はクワを持ち、夜はマシンガンを構える。そんな日常です。
- 環境破壊の加速: アボカドが儲かりすぎるため、カルテルは松や杉の天然林を勝手に伐採し、違法にアボカドを植え始めました。これにより水源が枯れ、生態系が崩壊しています。
- 輸出経路のブラックボックス化: 私たちがスーパーで買うアボカドが「クリーンな農家のもの」か「カルテルに上納金を払ったもの」か、判別する手段が事実上失われました。
4. メキシコ・アボカド戦争から学ぶ現代の教訓:無自覚な加害者にならないために
この物語の最大の被害者は、「土地を奪われ、家族を人質に取られた農家」と「破壊された地球環境」です。
そして、残酷な真実を言いましょう。この「暴力のシステム」に、最後の一押しをしたのは、東京やニューヨークで「アボカド最高!」と消費している私たち自身に他なりません。
あなたの財布と、メキシコの銃弾
「え、私がアボカドを食べることが悪いことなの?」そう思うかもしれません。もちろん、アボカド自体に罪はありません。しかし、以下の構造を知っておく必要があります。
- 需要の急増が「暴力のインセンティブ」になる: 私たちが流行に乗って特定のモノを爆買いする時、そのサプライチェーン(供給網)が整っていない地域では、必ず「力による支配」が発生します。
- エシカル消費の重要性: どこで、誰が、どうやって作ったか。これを確認しない消費は、間接的に犯罪組織の弾丸代を支援しているのと同じ、という厳しい現実があります。
授業のまとめ:明日からニュースを見るときの「眼鏡」をこう変えよう
- 「健康・環境によい」というトレンドを疑う: その裏で、別の何かが破壊されていないか?(アボカドのために森林が消えているように)
- カネの流れ(マネーフロー)を追う: その利益は、最終的に誰の懐を潤しているのか?
- 「安さ」と「流行」のコストを考える: 異常な安さや、急激な流行の裏には、必ず誰かが払っている「見えない代償」がある。
次にアボカドを手に取る時、少しだけ考えてみてください。それは「大地の恵み」なのか、それとも、誰かの血と涙で塗り固められた「緑の金」なのか。
世界はつながっています。あなたのスマホ一台、フルーツ一個が、遠い国の誰かの人生を変えているのです。知ることは、守ること。これからも、世の中の「綺麗すぎる話」の裏側を一緒に暴いていきましょう。
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