「犯人は誰でもいい、組織のメンツが守れるなら。」――130年前、一人のエリート軍人が“国家”という巨大なシステムにハメられた、史上最悪の胸クソ事件。
## ドレフュス事件の表向きの理由と、教科書が教えない「国家の面子」の違和感
1894年、フランス。ある日、軍のゴミ箱から1枚のメモが見つかります。そこには、フランス軍の機密情報が、敵国ドイツに売られた証拠が記されていました。
「おい、スパイがいるぞ!」軍部はパニックになります。犯人を捕まえなければ、国民から「フランス軍は無能だ!」と叩かれてしまう。そこでターゲットにされたのが、アルフレッド・ドレフュス大尉でした。
教科書では「スパイ容疑で逮捕された」と一行で書かれていますが、ここに大きな違和感があります。証拠はスカスカ。筆跡も微妙に違う。アリバイもある。それなのに、ドレフュスは南米の絶海、生きては帰れないと言われた「悪魔島」に送られてしまいます。
これ、今の感覚で言うと、「クラスでスマホがなくなったから、とりあえず目立ってて気に入らない奴を、証拠もないのに全校生徒でボコボコにして退学に追い込んだ」みたいな話なんです。
なぜ、そんな無理が通ったのか?それは、彼が「ユダヤ人」だったからです。当時のフランスには、「何か悪いことが起きたらユダヤ人のせいにすればいい」という、今で言う「炎上しやすい属性」への偏見が渦巻いていました。
軍部は「真実」はどうでもよかった。欲しかったのは「犯人を捕まえて安心したい大衆へのエサ」と「軍のプライド」だったのです。
## フランス軍部はいかにしてドレフュス事件で「組織の絶対権力」を維持したのか?
この事件の最大の受益者は、間違いなく「フランス軍部の上層部」と「反ユダヤ勢力」です。
彼らはこの冤罪を利用して、驚くべき「錬金術」を行いました。
【最強の例え:ブラック企業の「責任転嫁」システム】
想像してみてください。あなたがバイトしている超大手チェーン店で、店長(軍部)が管理ミスをして大損害を出したとします。店長は自分のクビが飛ぶのが怖いので、たまたまその日シフトに入っていた、ちょっと仕事ができるけど真面目で大人しいA君(ドレフュス)に、「お前がレジから金盗んだんだろう!」と濡れ衣を着せました。
しかも店長は、店内の防犯カメラ(真実)を消去し、偽の証拠を捏造。さらにはサクラのバイト連中に「あいつが盗むのを見た」と言わせます。結果、店長は「スパイを捕まえたヒーロー」として昇進し、本部からの信頼(国民の支持)を勝ち取ります。
軍部が得たもの:
- 組織の神格化: 「軍は間違えない」という空気を世間に植え付けた。
- 不都合な真実の隠蔽: 実は真犯人はエステルアジという借金まみれの少佐。でも彼を捕まえると「軍の調査能力」が疑われるから、スルー。
- ヘイトの集中: 国民の不満をすべて「ユダヤ人という異物」に向けさせ、自分たちへの批判をかわした。
まさに、「組織のメンツを守るためなら、個人の人生なんてゴミのように捨ててもいい」という、ブラック企業の極致のような構造が完成したのです。
## ドレフュス事件によるシステム変更:[真実優先]から[国家理性]への激変
この事件は、フランスという国の「OS(基本システム)」を強制的に書き換えてしまいました。
Before:法の支配
「証拠があるから有罪にする。無実なら助ける。」という、当たり前のルール。
After:国家理性の暴走(System 2.0)
「たとえ無実でも、それを認めると国家(組織)の信頼が揺らぐなら、有罪のままにしておくのが『正義』である。」
これ、怖すぎませんか?このアップデートにより、フランスは真っ二つに割れました。「嘘でも国を守れ!」という右派と、「真実がない国に価値はない!」という左派のガチバトルです。
ここに一人のインフルエンサーが登場します。小説家のエミール・ゾラです。彼は新聞の一面に「私は弾劾する(J’accuse)」という特大の見出しと共に、軍の不正を実名でブチまけました。今で言う、暴露系YouTuberが国家権力の闇をライブ配信で晒すような爆弾投下です。
この影響で、世界中の「眼鏡(フィルター)」が変わりました。「国家は国民を守るものではなく、組織を守るために国民を平気で生贄にする怪物になり得る」という真実が、世界中にログとして残ってしまったのです。
## ドレフュス事件から学ぶ現代の教訓:情報操作の「被害者」にならないために
この事件の最大の被害者はドレフュス本人ですが、本当の裏側で奪われたのは、「フランス国民の思考力」です。
当時の人々は、新聞(今のSNS)が流す「ドレフュスは売国奴だ!」というフェイクニュースを鵜呑みにして、熱狂しました。「あいつが犯人だとスッキリする」「共通の敵を叩くのが楽しい」という快感のために、一人の人間を地獄へ突き落とした。
これ、今の私たちのスマホの中でも起きていませんか?
- 誰かが炎上している。
- 詳しい事情は知らないけど、みんなが叩いているから自分も石を投げる。
- 後から「実は冤罪だった」と分かっても、誰も責任を取らない。
ドレフュス事件は100年以上前の話ではありません。「組織の不祥事を隠すために、弱い個人に責任をなすりつける構造」は、現代の企業不祥事、政治の裏金問題、ネットの誹謗中傷と全く同じ構造です。
授業のまとめ
- 「組織のメンツ」は、真実よりも優先されることがある。
- 「みんなが言っている」は、もっともらしい「嘘」のサイン。
- 「犯人が決まると得をするのは誰か?」を常に考える。
明日からニュースを見るとき、あるいはSNSで誰かが叩かれているのを見たとき、一度立ち止まってください。「これ、現代版のドレフュス事件じゃないか?」と。
あなたの「いいね」や「リポスト」が、誰かを「悪魔島」へ送る加担になっていないか。その「眼鏡」を持つことこそが、この狂った世界を生き抜く唯一の武器になるのです。
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