「支持率ガタガタ、暴動寸前。そうだ、戦争しよう。」——これは、絶望的な状況を「ナショナリズム」という劇薬で逆転させた、政治の究極の演出術である。
## フォークランド紛争の表向きの理由と、教科書が教えない「数字」の違和感
1982年。南米の端っこ、ペンギンと羊しかいないような小さな島々「フォークランド諸島(アルゼンチン名:マルビナス諸島)」を巡って、イギリスとアルゼンチンが激突しました。
「イギリスの領土をアルゼンチンが不法占拠した! 自国民を守るために艦隊を派遣するんだ!」
これが教科書に載っている、あるいは当時のニュースが伝えた「表向きのストーリー」です。正義の味方イギリスが、遠く離れた島を助けに行くという胸アツ展開ですよね。
でも、ちょっと待ってください。
当時のイギリス、実はめちゃくちゃ「お通夜状態」だったんです。首相のマーガレット・サッチャー(伝説の「鉄の女」)は、強引な経済改革(サッチャリズム)を推し進めた結果、失業者は増え続け、街では暴動が発生。支持率は史上最低レベルまで急落していました。
「このままだと次の選挙で確実にクビ……。」
そんな絶望的なタイミングで起きたのが、この紛争でした。アルゼンチン側も同様です。当時のアルゼンチンは軍事独裁政権。経済はボロボロで国民の不満は爆発寸前。「国民の目を外に向けさせるために、領土問題に火をつけようぜ!」という、これ以上ないほど「お互いの政権維持という利害が一致した」タイミングで戦争が始まったのです。
## サッチャー政権(最大の受益者)はいかにしてフォークランド紛争で莫大な富と権力を得たのか?
この紛争で、一番「儲けた」のは誰か?おカネというよりも、もっと恐ろしいもの——「無敵の政治権力」を手に入れたのは、サッチャー政権でした。
これを今のスマホアプリ業界に例えてみましょう。
あなたは超不評なゲームアプリの運営者だとします。 アップデートのたびに「改悪だ!」「課金ゲー!」と炎上し、レビューは星1。ユーザーは離れ、サービス終了(総辞職)まであと一歩の状況。
そこであなたは「邪悪な他社(アルゼンチン)」が、あなたのサーバーの一部をハッキングしたというニュースを大々的に流します。
「みんな! 課金への不満は一旦忘れてくれ! 今、我々のアイデンティティが脅かされているんだ! 立ち上がれ!」
するとどうでしょう。さっきまで運営を叩いていたユーザーたちが、「そうだ! 運営を守れ! 敵を倒せ!」と一致団結。これまでの不満はどこへやら、みんなが運営を応援し始めます。
これがフォークランド紛争で起きたことの正体です。
サッチャーは、地球の裏側の小さな島を奪還するために、当時最大級の艦隊を派遣しました。イギリス国内では「我々はまだ帝国なんだ!」「イギリス万歳!」とナショナリズム(愛国心)が爆発。
紛争に勝利した瞬間、彼女の支持率はV字回復。「不人気でクビ寸前のオバサン」は、「国を救った鉄の女」へと神格化されたのです。
サッチャーの心の声:「(よし、これで文句を言わせずに、国鉄や郵便局をバラバラにして売却(民営化)したり、労働組合を叩き潰したりできるわ。文句を言うヤツは『非国民』よ!)」
紛争という名の「劇的なプロモーション」によって、彼女はその後の強引な構造改革(新自由主義)を突き進める「パスポート」を手に入れたのです。
## フォークランド紛争によるシステム変更:【斜陽の帝国】から【新自由主義の実験場】への激変
この事件は、単なる領土の取り合いではありません。世界を動かす「OS(基本ソフト)」が書き換えられた瞬間でもありました。
Before:古き良き(?)イギリス
- 政府が公共サービスを守り、労働者の権利が強い。
- でも、経済は停滞して「英国病」と呼ばれていた。
After:サッチャー・アップデート(新自由主義OS)
- 「強い者が勝つ、自己責任の世界」への転換。
- 公共サービスの民営化、規制緩和、弱者切り捨ての加速。
紛争前、イギリス国民はサッチャーの改革に「痛すぎる! やめてくれ!」と猛反対していました。しかし、紛争で「勝った」ことで、彼女のリーダーシップに対して国民は「NO」と言えなくなってしまった。
これ、現代で言うなら「超高額なサブスク契約を、感動的なCMを見た直後のテンションで契約させられた」ようなものです。
後から冷静になって「あれ、これ高くない? サービス悪くない?」と思っても、もう契約は済んでいて、法律もシステムも書き換えられた後。フォークランド紛争という「トリガー(きっかけ)」があったからこそ、私たちは今、超格差社会や行き過ぎた自己責任論という「サッチャーが作ったOS」の上で生活していると言っても過言ではありません。
## フォークランド紛争から学ぶ現在(いま)の教訓:【最大の被害者】にならないために
では、この事件で一番の「被害者」は誰だったのでしょうか?
それは、アルゼンチンの若き徴集兵たちです。
彼らの多くは、ろくな訓練も受けず、十分な冬装備も持たされないまま、「祖国のために!」というスローガン一つで極寒の島に送り込まれました。戦っていた相手はイギリス軍だけではありません。上層部の無策、空腹、そして凍えるような寒さ。
アルゼンチン軍事政権のトップたちは、自分たちの権力維持のために、若者たちの命を「使い捨てのポーン(チェスの駒)」として利用したのです。
ここから学ぶべき「現代の教訓」は一つ。
「政治家が急に大きな声で『敵』を攻撃し始めたり、国民の『誇り』を煽り始めたりした時は、必ずその裏で【隠したい不都合な真実】がないか疑え」ということです。
- 景気が悪い。
- 不祥事がバレそう。
- 政権が倒れそう。
そんな時、権力者はいつも「わかりやすい敵」を作ります。そして、私たちのSNSのタイムラインは「あいつらは許せない!」という怒りで埋め尽くされます。
でも、その怒りに身を任せている間に、あなたの財布からお金が抜かれ、あなたの権利を制限する法律がコッソリ通っているかもしれない。
「明日からニュースを見るときの『眼鏡』を変えてみよう。」
感動的な愛国ストーリーの裏側には、必ず「帳簿(バランスシート)」があります。誰がリーダーとして生き残り、誰がそのコストを支払わされているのか。
フォークランド紛争は、40年以上前の出来事ではありません。今この瞬間も、どこかで形を変えて繰り返されている「権力維持のテンプレート」なのです。
次にスマホで「〇〇国がけしからん!」というニュースを見たら、心の中でこう呟いてみてください。
「おっと、今、誰かが支持率を上げたいのかな?」
それだけで、あなたはもう「使い捨ての駒」から卒業できるはずです。
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